薫製について、もう少し詳しい話

薫製とは

薫製の手順

薫製の種類

燻煙材の話

薫製箱の話

熱源の話

温度調節の話

薫製とは。

 塩蔵した魚、肉などに、ヤニ成分の少ない樹木を燃やした時の煙をかけたもので、古来は保存食の製法に、そして現在では素晴らしい味と香りの調理法として、人々に愛されています。

薫製の手順

 薫製は基本的に以下の4つの手順で作ります。

 塩蔵 > 塩抜き > 風乾 > 燻煙

 それぞれには目的があります。

 塩蔵の目的

 塩には殺菌作用があり保存性が高められますが、現在では塩味を付けるのが主目的ですので、塩まみれにする事は少なく、肉1Kgに対して塩30gくらいが使用されます。
 ベーコンなどの大きな肉の塊を塩蔵する時には、中心部まで塩が浸透するように、1週間くらい塩蔵します。また、塩が浸透する事によって、中の水分が絞り出され、これも腐敗を遅らせる事になります。
 塩蔵の時に、いろいろな香辛料、香草などを加えると、出来上がった時に素晴らしい味になります。

 塩抜きの目的

 肉の中心部が良い塩梅(あんばい)になった時、外側は塩が強すぎて食べられる状態ではありません。肉を流水に数時間入れて塩抜きする事によって、外側の塩分が抜かれ、塩梅が平均化されます。

 風乾の目的

 中の水分を減らすのが目的です。乾けば乾くほど保存期間が高まります。ビーフジャーキーや鰹節(これも薫製の一種)などのようにカチカチに乾燥させると、保存方法に注意すれば数年間食べる事ができます。
 また、あまり乾燥を必要としないハムやベーコンでも、表面を乾燥させることにより、煙の乗りが良くなります。

 燻煙の目的

 樹木の煙の成分には、沢山の化学物質が入っています。効果のわかってる物質の中には、殺菌作用があるものがあります。防虫効果もあります。昔の人もわかってたんですねぇ。そしてなにより肉や魚にかけると、素晴らしい香りと味になります。
 今日では、保存するにはフリーザーや冷蔵庫がありますので保存食というより、素晴らしい味と香りの調理法となってます。

薫製の種類

 薫製には3つのタイプがあります。目的や材料によって使い分けてください。

冷薫

 摂氏10度以下で風乾して、摂氏30度以下で燻煙をかけて作るタイプで、生ハム、スモークサーモン、ドライサラミなどが有名です。東京では気温が高くて難しいですね。湿度も高いので腐敗しないように細心の注意が必要です。塩分濃度を高めたり、風乾を重ねるなどして保存を高める事が出来ます。

温薫

 50から80度でスモークするタイプで、ハム、ベーコン、ソーセージなどが有名です。適度に水分を保ちながらも塩蔵によって1週間くらいは保存が出来ます。安全のために加熱調理して食べることが多いです。(ハムはスモークした後にボイルして、それを冷やしたのが売られています)もっともポピュラーな薫製で、サンデーシェフ(主夫?)の腕の見せ所ですね。

熱薫

 80から130度でスモークするタイプで、塩蔵はせず、その場で塩・コショウして、スモークします。茹でてからスモークするのも、このタイプと同じと考えて良いでしょう。
 アウト・ドア・レジャーが盛んですが、釣った魚をその場でスモークしたり、家では塩茹でしたホタテやエビをスモークしたりして、スグに楽しめる簡単スモークですね。

 現在ではスモークウッドと言う、熱源の要らない薫製材が出ているので、熱薫の製法なのに温度を上げずに済んだりして、いろいろな調理法が生まれています。

燻煙材の話

 燻煙材には色々な木がありますが、基本的にはヤニ成分が少ないものが選ばれます。松ヤニべっとりでは食べられませんからね。以下に有名な(失敗の少ない)木の種類と特徴を書いておきます。

 サクラ

 すっきりとした、香りの強い木です。日本人に好まれているそうですが、桜の花が日本人は好きですからね、イメージも手伝ってるのでしょうか。肉、魚、なんでもいけるオールマイティな木と言っても良いでしょう。

 リンゴ

 甘くてマイルドな香りがする木です。私の一番好きな香りで(ほとんどリンゴしか使わないってくらい)、豚肉や魚に向いています。牛肉にも合いますが、臭みが強い肉の時は避けた方が良いかもしれません。

 ブナ、クルミ

 煙っぽい香りの強い木です。においの強い肉、マトンなどに向いているでしょう。ヤギとかバッファローにも合うと読んだ事があるけど、日本じゃ・・(^^;

 この他、お茶の葉や、紅茶の葉を使う人もいますし、色々な木を同時に使うブレンド派も多いそうです。

薫製箱の話

 箱になってれば何でも良い。

 とは言うものの、パソの筐体とかではちょっと使いづらいので、色々と考えてみましょう。基本的な構造は、下の汚ーい絵をご覧ください。

 箱の中に獲物を吊るし、電気コンロで温度を上げて、横っちょのお皿にスモークウッドを置いて焚きます。棒だとあまり数が吊るせないので、私はカギ状の洋灯吊りを沢山天井に取り付けています。

 容積について。

 冷薫は箱内の温度を極力下げたいので、なるべく大きくしてください。最低でも100リットル以上は必要でしょう。

 温薫は50から80度で行いますが、容積が小さいと温度が上がりすぎてしまいます。18リットルから100リットルくらいまででしょう。ログハウスの様な小屋を作ってしまう人もいますが、温度を上げるのが大変だと思います。

 熱薫の場合は温度を80から130度まで上げますので、あまり容積が大きいと、温度を上げるのが困難です。中華鍋くらいから、せいぜい18リットル(いわゆる一斗缶)位まででしょう。

 材質について。

 私が最初に作ったのは、大きな段ボール箱の薫製箱でした。でも段ボール箱から煙がモクモク出ていると、風の日などは、やっぱ火事が恐くなってきますよね。

 木製もやはり火を取り扱うので同じ恐さがありますが、段ボールより倒れそうも無いので、その分安心だと思います。

 金属製、やっぱこれが一番安心です。だって燃えないですから。しかし全て自分で作るには、板金加工の知識と経験が必要ですので、手軽に入手できるものを改造しましょう。薫製箱に出来そうなものを列挙してみます。

一斗缶
 これはガソリンスタンドやカー用品店に行きたくなるでしょうが、絶対にやめて下さい、臭くて使えません。そば屋や食堂は、醤油などを一斗缶で買う店も多いので、空き缶をもらってきましょう。ごま油の缶とかもらっちゃうと洗うのが大変な感じですのでご注意を。一斗缶はあまり大きくありませんが、ベーコンを1つくらいなら作れるでしょう。

ロッカー
 よく会社などで衣服を入れるロッカーがありますね、あれはスグに薫製箱になりますよ。ハンガーを吊るす所に獲物を吊るせるし、高さがあるので、吊るす紐の長さを変えてやれば、たくさん作れるでしょう。

ガラス戸付きスチール本棚
 私が使っているのはこれです。よくオフィスに置いてあるヤツです。ガラス戸なので、中の様子が見えて楽しいし安心。容積もたっぷりあるので、ベーコンなら10個くらい作れます。まぁ、ベーコンを10個も作る事はありませんが、ベーコンとハムとビーフジャーキーを同時に作ったりしています。ちょっと容積が大きいので、電気コンロは2つ必要です。

アルミフレーム材を使って組み立てる
 次世代ほしのん亭薫製箱は、これでやろうかと思っています。写真のは山武商会ってところが販売しているモノですが、日曜大工店などにも売っています(部品点数は比べ物にならないほど少ないですが)

 ミスミと言う所でも取り扱っています。カタログは無料なので取り寄せましょう(笑)

熱源の話

 冷薫を除き、温薫、熱薫には熱源が必要です。

 熱薫は温度が高いので、そのままガスコンロに掛けたり、焚き火にかけても良いでしょう。

 温薫は温度調節が必要になります。
 カセットコンロを薫製箱の中に入れるのは大変危険です。熱で爆発します。かと言って、中で薪を焚いたのでは温度調節が難しいでしょう。
 とくれば、やはり一番簡単に調節が出来るのは電気ですね。つまり電気コンロを使うのが何かと便利なのです。

温度調節の話

 なぜ、温度調節が必要なのでしょうか。それは、例えば豚肉でハムやベーコンを作ろうとする時など、67度を越えると肉に火が通ってしまい茶褐色になって「焼き豚」になってしまうからです。チーズなどは溶けてしまいます。そこで温度調節が必要なのですが、初級、中級、上級、ほとんど悪趣味に分けて解説しましょう。

初級

 まず、天ぷら鍋などに使用する温度計を用意します。「なければ買って来い!」と言いたい所ですが、この温度計は単体で買うと2500円位します。「温度計付き天ぷら鍋」はディスカウント店などで980円くらいですので、鍋ごと買ってしまいましょう(笑)

 温度計を薫製箱にブッ刺します。電気コンロには強・弱、もしくは5段階くらいの調節が出来るものが多いので、それで荒調節します。

 次に薫製箱の天井に10センチくらいの穴を明けて、温度が低いようだったら板などで少し塞いで、全部開放しても温度が高いようだったら、穴を広げるか、もう1つ穴を明けて温度調節をします。

中級

 やはり、天ぷら鍋用の温度計を用意してください。
 それからサーモスタットを買ってきましょう。サーミスタと言う測定素子が付属してるか別売りで購入しなくてはいけないのですが、その時に「薫製器を作りたいので、0度から100度まで測定できるものをください」と必ず表明してください。それからほとんど大丈夫だと思うのですが、最低でも100V10Aくらいの開閉が出来るものを選んでください。

 配線の際は感電しないように十分ご注意下さい。

 次にセッティングですが、天ぷら温度計とサーミスタと電気コンロを薫製箱にいれます。

 温度の調節方法ですが、こたつのサーモスタットみたいなモノなので、温度計を見ながら調節つまみを回して、目的の温度で切れるようにしましょう。

 これで温度調節は自動になりました。らくちんですよ。後は煙が絶えないように時々確認して、スモークウッドを足していってください。

上級

ちょっとウンチクを語らずにはいられません(笑)

 なぜサーモスタットでは満足できないのか?

 第1に天ぷら温度計の目盛りが荒くて、今が63度か64度か65度かわからないし、しかも反応が鈍いです。

 第2にON/OFF動作には欠点がある事です。薫製箱を60度にしたい場合、薫製箱内が60度になってからコンロの電源を切ったのでは間に合わないのです。なぜならコンロの電源を切っても、コンロの温度は瞬時に室温に戻る事はないからです。そのためサーモスタットで電源を切っても薫製箱内の温度は上昇してしまい、60+5度ぐらいまで達してしまいます。

 下限温度にも同じ事が言えて、57度になったら電源が入るようにセットしても、コンロはスグには熱くならないため、57−5度くらいまで下がってしまいます。ですのでサーモスタットの性能はプラスマイナス3度の性能でも、薫製箱の温度は13度もの間を行ったり来たり(ハンチング)してしまうのです。

 ここから先は趣味の世界と言うか、性格の問題ですが(^_^;) それから自作するには、ちょこっと電気の知識が必要かも知れません。

 さて、上記の問題を解決するために、いくつかの方法があります。読むのがカッタリー人はジャンプ!

比例制御(P)
 設定値の周辺に比例帯を設けます。たとえば60度を設定値として、プラスマイナス5度を比例帯とした場合、55度で比例制御に入るわけです。比例制御とは比例帯より低い温度では100%を出力して、比例帯より高い温度では0%を出力、そして比例帯の中では、その温度に対して出力を変化させる事です。
 たとえば現在57度だったら比例帯幅が10度あって2度入っているのだから、20%ほど比例帯に入ったと言い、80%の出力をします。62度なら30%の出力になります。60度では50%の出力となるわけです。
 これを動作と組み合わせて、62度だったら1秒間に0.3秒間ONにします。これによって設定温度に近づけていくので、温度の乱れ(いわゆるハンチング)が減少するのです。

積分動作(I)
 比例制御にも問題があって、設定値の60度は50%で成立できるかというと、オフセットが発生してなかなか設定値には成らないのです。そこで温度変化を積分して時間経過によってオフセットをなくすようにします。

微分動作(D)
 比例制御や積分制御では、起こった変化に対して、時間が経つことによって制御しますので、突発的な外乱(スモークウッドを入れるために扉を開けるなど)に対して、非常に弱いものです。そこで起こった偏差の傾斜(微分係数)によって出力を変える事により、急激に温度が下がれば、急激に温度を上げようとするのを微分制御と言います。

 これらの3つの制御を組み合わせる事によって、設定値から離れる事無く、しかも外乱に強い温度調節が可能になります。これをそれぞれの頭文字を並べてPID制御と呼んでいます。私はこのPID制御で薫製を作っています。と言うと「こんな装置を作れない、素人には絶対無理」と思われるかな。ちょっと高価なので、かなり思い切らないと買えませんが、63度ってセットすると、63度になるのは快感です(笑)

 次に測定素子なんですが、サーミスタではなく熱電対と言うのを使用します。2種類の金属が接すると、そこに熱起電力が発生することを利用した素子で、手軽に入手出来るK−CA(クロメルーアルメル)タイプが良いでしょう。直径は1ミリか1.6ミリが良いでしょう。細い方が反応が速いです。取り付ける時には極性を間違えないように注意してくださいね。

ほとんど悪趣味(^_^)

 ここまで凝ったのですから、電気コンロを制御するリレーにもこだわりました。普通の接点式のリレーでは、ON/OFF時にバチッとノイズが発生します。ウチなどは古いオーディオとかあるので、スピーカーが壊れるような音が出ます、パソコンもシールドが弱いのを使ってるのでフリーーーーズ!します。

 そこで、無接点のSSR(ソリッドステートリレー)ですね。ついでにもっとノイズを減らすために、ゼロクロス動作のを選びました。ゼロクロスとは交流の波がゼロになる時にON/OFFするカシコイ機能です。

 さて、この凝りに凝った温度調節器、以前から作って欲しいとのご要望があったのですが、けっこう高価なので、買って後悔されては嫌ですので断わっていました。しかし「それでも、温度調節に悩んでいるので作ってくれ」とのご要望も度々あり、受注生産ではありますが、製作することにいたしました。

興味のある方は下の写真をクリックしてください。製品情報をご覧いただけます。

温度調節にこだわりたい貴方様のために・・・

薫製温度調節器

これからの夢

 ここまできたら、あとはRS-232C出力の温度計が出てるのでパソに取り込んで、固定カメラを設置してインターネットで中継して・・(笑)

 まだ、スパイスやハーブの話もしたいのですが、あまり知識が無いもので、その手のホームページをYahooなどで検索してみてください(おいおい)

 それでは、素晴らしきスモーククッキングをお楽しみ下さい(^_^)